• 社長ブログのメイン画像
     

祝・世界遺産登録
  仕事柄、建物が商売道具の私は、この40年余りの間に、たくさんの建物を建て、さらに増築や改装などを繰り返してきました。だから自然に建物には興味が向いてしまいます。

 その建物で世界遺産に登録認定されたと話題を呼んでいるのが、上野にある国立西洋美術館です。フランスの建築家、ル・コルビュジェ(1887〜1965)の作品群が対象で、世界7か国にある17の建築物の一つとして認定されたのです。日本の建物が選ばれたというよりも、ル・コルビュジェの作品が選ばれたということです。だから私は少し騒ぎ過ぎではないかと思うのですが、関係者にとっては喜ばしいには違いありません。

 このことについて私にちょっとだけ関わりが生じることがありました。実は8月上旬に予定していた「イヤタカ友の会」の文化講演会で、西洋美術館の馬淵明子館長を予定し講演の依頼をしておりました。タイムリミットになってもなかなか日程を確保できる目途がつかないということで、結局断念したのですが、今思えば、世界遺産登録のことでそれどころではなかったわけです。馬淵館長には世界遺産登録の話ではなく、純粋にご専門の西洋美術の話をお願いしていたのですが、もしお引き受けいただいていたら、今頃は急遽演題を世界遺産に変更していたかもしれません。

 そんなこちら側の一方的な関わりなのですが、実はル・コルビュジェについても私には関わりというよりはエピソードがあります。コルビュジェの数ある作品群で代表作を上げるとすれば、サヴォア邸(1931)とロンシャン教会堂(1955)と言われています。私はこのサヴォア邸に5年程前訪れました。彼の前期を代表する傑作と言われているだけあり、80年以上経てもまったく古さを感じさせない佇まいで感心しました。近代建築を切り拓いた巨匠ですから、彼が創り提示した要素が今に至るまで至る所に引き継がれているからだと思います。

 パリの郊外の町、ポアシーというところです。郊外電車に乗り町に降り立って通行人にサヴォア邸の道順を聞いたのですが、数人に聞いてもだれもわからず意外でした。世界の巨匠の作品だからみんなわかるだろうと高を括っていたのですが、当てが外れてあわてた思いがあります。ようやくわかっている人に当たり、聞いた道順通り、長くゆるやかな坂道を登ってしばらくしたところに表示看板があり、ほっとした思い出が蘇ってきました。

 さらにもう一つ、その前年にも私はフランスを訪れていました。ちょうどブローニュの森沿いにあるロンシャン競馬場で有名な凱旋門賞の開催日と日程が重なっているのを知り喜びました。ロンシャン教会堂とロンシャン競馬場を重ねた私は、競馬のついでに教会堂を見ようと思ったのです。ところが行ってみてビックリです。同じロンシャンでも教会堂の方はまったく別の場所、パリからはるか直線距離で東南東300kmも離れているところにあると知らされたのです。馬券もはずれ、もくろみもはずれ、いいことなしでした。

 そんな私のル・コルビュジェに関わるお粗末な二つの思い出ですが、ロンシャン教会堂の方は、写真で見る限り、軽やかでモダンなサヴォワ邸とは全く趣を異にした彫刻的造形の建物になっています。コルビュジェの後期の代表作と言われているのですが、一人の作家でこんなにも異なるものを創りあげたことに感嘆してしまいます。

 さて国立西洋美術館の方ですが、こちらは無限成長という独創的なアイディアのもとで作られた建物の一つです。最初に建物の中心部に導かれ、そこから螺旋状に外側に向かって進んでゆく構造です。渦巻の先端を伸ばしてゆくことで簡単に増床出来るというアイディアです。美術館は年数を経るごとに展示物が増えるという特性を考慮したのです。しかしインドにつくられた同種の美術館と比べ、西洋美術館は規模が小さく一回りで終わっていて中途半端です。しかもコルビュジェは基本設計だけで、実施設計は彼の子弟である3人の日本人建築家が行っています。こちらも中途半端なのです。

 何やらいちゃもんをつけるような感じになってきましたが、もちろん世界遺産登録に認定されたのは、周到な準備のたまものだと思うので充分称賛に値します。ただ世界遺産の格調には反するのですが、自称施主のプロを任ずる私は、いつも予算との格闘を強いられるので、本当は予算との兼ね合いも含めて建物の価値を見極めることが必要なのではないかと、良い建物を見ると、いつも悔し紛れに思ってしまうのです。

13:48, Wednesday, Jul 20, 2016 ¦ 固定リンク

  • ページトップへボタン

Powered by CGI RESCUE