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建築雑感
  建築に興味があるというのはこのブログで以前にも書いたことがあります。と言っても私の場合はもっぱら施主の立場ですので、建築家や建設屋の立場ではありません。使う側で、しかも住居のように自分で居住するのではなく、商売道具としての建築です。だからお金の問題も含めさもしい要素がたくさん混じるので、純粋に作品としての建築を語れるわけではありません。ただ長年建物のことで思案する機会を多く持つと、いろいろ建築そのものに対する思いが蓄積されてきます。

 もう先月のことですが、東京出張の折、時間が3時間ほど空いたのでどうしてつぶそうかと迷ったことがありました。その前の東京出張時に、新聞社勤めの知り合いの方から博物館や展示館の招待チケットを数種類戴いたことを思い出し、出張カバンにそのまま入れていたはずだったので探してみると、出てきました。その中から期日が過ぎたものを除き、これだと思ったのが、「日本、家の列島―フランス人建築家が驚くニッポンの住宅デザイン―」と名付けられた展示会でした。場所も新橋からほど近い汐留のパナソニックミュージアムでしたので、宿から遠くもなくお誂え向きでした。

 ヨーロッパ巡回帰国展だとチケットの隅に書かれていたその展示会、人はまばらでしたが、私には面白いものでした。展示は大きく二つに括られ、ひとつは「昨日の家」がテーマです。80年前から30年ほど前に建てられた住宅の紹介で、14人の建築家の作品写真と図面、そして1:50の模型が添えられていました。もう一つは「今の家」で、こちらは20人の建築家の設計になる住宅が同様な形で紹介されていました。

 その展示の最初を飾っていたのが、唯一の外国人アントニン・レーモンドの「夏の家」という作品でした。つくられた当時、世界遺産の建築家ル・コルビュジェの盗作ではないかと物議をかもした作品ですが、後に両者は和解したようです。レーモンドはチェコ出身の建築家です。帝国ホテルを設計したフランク・ロイド・ライトの手伝いで来日し、そのまま日本に残り、レーモンド設計事務所を設立し、日本で数々の建築を手がけた方です。

 実はイヤタカの聖セシリア教会はこのレーモンド事務所に設計を依頼しました。だから少し詳しいのですが、代々木にあるその事務所ビルの最上階の一角には彼の自宅の一部が移設され、メモリアルルームとして展示されておりました。当時私はイヤタカが教会をつくるという「清水を飛び下りる」心境で、逆に後ろ指を指されない立派な教会をつくろうと意気込んでおりました。そんなことで見出したのが、レーモンド設計でした。レーモンドは1976年没ですが、事務所は引き継がれ、質の高い建築を手掛ける設計事務所として名を馳せておりました。

 そんな縁のあるレーモンドがトップを飾っていたのでびっくりしてしまいましたが、「昨日の家」コーナーは、前川國男、清家清、丹下健三、安藤忠雄、伊東豊雄など、建築界の重鎮が並んでおりました。さらに「今の家」の方は、まさに今活躍されている若手建築家が主でしたので、名前よりも、その作品の斬新性や着眼点のおもしろさなどで、それぞれが競い合っておりました。

 この展示会、4人のフランス人(建築家3人と写真家)で企画し、ヨーロッパ巡回をし、日本に戻ってきたということですが、彼らの目から見れば、日本の建築、とりわけ住居は空間の取り方がヨーロッパのそれと異なり、そのユニークさを知らせたかったようなのです。これから先は建築論議になってしまうので、それを論じる力は私にはないのですが、私にとっては刺激的なひと時でした。

 さて、建築の話ついでに、今私が手がけている建物の話です。3年ほど前に取得した5階建てのビルをリノベーションする計画を進めています。2100m2ほどの延床面積ですのでそれなりに大きいのですが、当初は使うか取り壊すかで悩み、使い方で悩み、ようやく考えをまとめ、進めているものです。最後の難関はやはり予算です。見積もりの提示を待ってあれこれ中味の吟味をすることになるのですが、今月中に決定し、来月から着工の予定ですが、このままでは少しずれそうです。

 建築と縁のきれない私ですが、最近は年を取ったせいか、建築でも、存在をことさら主張するものよりも、周りに馴染むものに惹かれてしまいます。住宅はとりわけそれが大事だと感じます。商業施設はそうもゆかないのですが、さて今のリノベーション、秋の完成予定ですが、もうしばらくは建物で悩みそうです。

by 北嶋 正 ¦ 17:46, Wednesday, Jun 14, 2017 ¦ 固定リンク

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